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【整う食の選択|連載ブログ】 第3章
自分の健康を選ぶことが、地球を癒す選択になる理由(Planetary Health)
近年、世界のトップ経営者やアスリート、あるいはグローバル企業を牽引するビジネスリーダーたちの間で、食事を単なる「栄養補給」ではなく「パフォーマンス維持のための戦略的自己投資」と捉える動きが急速に広がっています。
そして今、その関心は「個人のコンディショニング」にとどまらず、「自分が選ぶ食事が、地球環境や社会にどんな影響を与えているか」というサステナビリティ(持続可能性)の視点へと拡張しています。
なぜ、自分の体を整える選択が、そのまま地球環境を守ることにつながるのか?国連(UN)や国際的な科学研究機関が発表している世界水準のデータをもとに、科学的な根拠を紐解いていきます。
科学界が提示した解:「Planetary Health Diet(地球と人のための食事)」
2019年、世界的に権威ある医学誌『The Lancet』と各分野のトップ科学者で構成される「EAT-Lancet委員会」が、人類史における画期的な報告書を発表しました。それが「Planetary Health Diet(プラネタリー・ヘルス・ダイエット)」です。聞いたことはある、という方も多いでしょう。
これは、2050年に世界人口が約100億人に達した際、「人類の健康を護りながら、地球の許容量(プラネタリー・バウンダリー)を超えずに食料を供給し続けるための世界共通の科学的基準」として策定されたものです。
推奨される食事は、赤肉や砂糖の消費量を大幅に削減(約50%以上減)し、野菜・果物・豆類・堅果類(ナッツ)を中心とした「プラントベース(植物性食)」へ移行すること。つまり、「人の身体にとって健康的な食事」と「地球環境にとって負荷の少ない食事」は、多くの大規模研究において高い親和性が示されているということが、最新科学によって明らかになりつつあるのです。
数字で見る現実:食卓の向こう側で起きている地球環境の変化
私たちが日常的に消費する「食」は、地球規模の環境問題とダイレクトに直結しています。主要な国際機関(IPCCやUNEP、FAO)のデータから、その実態を見てみましょう。
① 温室効果ガス(GHG)と気候変動
国連環境計画(UNEP)やFAOの報告によると、世界全体の温室効果ガス排出量の約14.5%〜18%が畜産業に起因しているとされます。これは、世界中のあらゆる自動車・飛行機・船・電車などの「運輸部門全体の合計」に匹敵、あるいはそれを上回る規模です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の特別報告書では、植物性食品を中心とした食事への移行により、年間最大80億トン相当のCO2排出削減可能性があると指摘されています。
② 巨大な「ウォーターフットプリント(仮想水)」
国連(UN-Water)関連のデータによれば、牛肉1kgを生産するために必要な水は約15,000リットル(お風呂数十杯分)にのぼるとされます。これに対し、野菜1kgの生産に必要な水は約300〜500リットル程度です。
③ 土地利用と生物多様性の保全
オックスフォード大学の研究(2018年, Science誌)によると、全世界がプラントベースに移行した場合、世界の農地面積を約75%(アフリカ大陸全体と同等の広さ)削減できると試算されています。畜産飼料のための森林伐採を食い止めることは、生物多様性の維持や熱帯雨林の保護に直結します。
※上記の統計は執筆時点で参照した各機関の資料に基づく概算値です。
「健康への投資」が「未来への貢献」になる心地よさ
ビジネスの世界において、ESG投資(環境・社会・ガバナンス)やSDGsが不可欠な評価軸となったように、個人のライフスタイルにおいても「自分の選択が社会にどのようなインパクトを与えるか」という視点が成熟しつつあります。
しかし、環境保護のために何かを犠牲にしたり、我慢をし続けたりする必要はありません。脳と身体をクリアに保つために、消化に負担のかからない植物性の食事を選ぶ。日々のパフォーマンスを高めるために、抗酸化物質や食物繊維が豊富な食材を摂る。その「自分の身体を慈しむ選択」そのものが、巡り巡って地球温暖化の抑制や水資源の保全に貢献している──これほどスマートで心地よい循環はありません。
整体師として身体の循環(血流や気のめぐり)を観察してきた私にとって、「人の身体の循環」と「地球という生態系の循環」は、よく似た構造に見えます。一部に過度な負担がかかり、かばえる範囲を越えると、全体が悲鳴を上げる。そういうときは、一部への不要な負担を取り除き(引き算)、本来のバランスを取り戻すことで、自浄作用が働き始める。
まずは一週間のうち数食だけでも、自分と地球を同時に整える「プラントベースの選択」を、試しにやってみるのも良いと思います。
次回はいよいよ最終回。「分かってはいるけれど、実際どう始めればいいの?」という声にお応えして、コンビニ・外食での選び方や、無理のない始め方を具体的にご紹介します。



